2026-05-10
AIのPoCが「本番稼働しない」本当の理由
「デモは良かった。でも現場には入れられない」——士業事務所のAI導入で繰り返されるPoC止まりの構造的な原因と、その突破口を解説する。
「PoCは成功したのに、なぜ動かないのか」
AIプロジェクトの現場でよく耳にする言葉がある。
「デモは良かった。精度も出た。でも実務には入れられない」
これは技術的な失敗ではない。組織的・構造的な失敗だ。
士業事務所でのAI導入支援を通じて見えてきたのは、PoC止まりになるプロジェクトには共通のパターンがあるということだ。
3つの「断絶」
断絶①:課題設定と現場の乖離
PoCの課題設定は、往々にして「所長・IT担当が考えた課題」だ。実際に書類を処理しているスタッフが本当に困っていることとは、別の問いを立てている。
精度95%のモデルを作っても、現場が「そこじゃない」と感じていれば使われない。
断絶②:技術検証と業務フローの乖離
PoCはデモ環境で動く。本番は既存の業務システム・帳票・手順書に繋がなければならない。この間には、セキュリティ・データ品質・例外処理・承認フロー——無数の「最後の1マイル」がある。
ベンダーが提案書を出して担当者に渡した瞬間、誰もこの1マイルを責任を持って走らない。
断絶③:成功指標と業務KPIの乖離
「AI回答の精度98%達成」はPoCの成功指標だが、業務KPIではない。本番で何件の申請処理が削減されたか、月何時間の工数が減ったか——これを最初から設計していないプロジェクトは、本番移行後に「で、何が良くなったの?」と問われて答えられない。
「誰が最後まで責任を持つか」が全て
AI導入プロジェクトが本番稼働しない根本原因は、責任の所在の曖昧さだ。
コンサルは提言で終わる。ベンダーは要件定義通りのものを納品する。AI企業はモデルを渡す。誰も「成果が出るまで」コミットしない。
私たちのアプローチは違う。課題設定から一緒に考え、PoC中も現場の業務フローを観察し、本番移行の設定を自分たちで行い、KPI改善を運用に組み込む。課題定義から成果計測まで一気通貫で担うことで、断絶が生まれる余地をなくす。
成果が出るまで現場にいる。それだけのことだ。
PoCから本番移行で詰まっているプロジェクトがあれば、現状をお聞かせください。どこで止まっているかを60分で整理することから始められます。
三方 浩允