PDFをAI検索に使うときは、文字を取り出せるか、必要な箇所が検索に出るか、その箇所を根拠に回答できるかを分けて確認してください。「PDFが読めない」という結果だけでは、どこを直すべきか決まりません。
この記事では、税理士・弁護士などの事務所が所内文書をRAGに登録する前の確認手順を提案します。RAGは検索した情報を生成AIの回答に利用する構成です。MicrosoftのAzure AI Search公式資料も、文書の分割、画像からの抽出、検索方式、アクセス制御を別の設計項目として扱っています。RAGの概要
スキャンPDFはAI検索に使えないのか
スキャンPDFを一律に対象外にする必要はありません。画像から文字を取り出すOCRや画像解析に対応した構成もあります。Azure AI SearchのOCRスキルは画像中の印刷文字・手書き文字を認識し、PDFに埋め込まれた画像も扱います。これは特定製品の仕様であり、利用中のAI検索が同じ処理を行うかは別途確認が必要です。OCRスキルの仕様
まず検証に使ってよいPDFを選び、抽出された本文を元のページと並べて確認します。PDF閲覧ソフトで文字を選択できるかは手がかりですが、それだけでAI検索側の処理結果までは確認できません。
文書の種類ごとに何を点検するか
以下は取り込み可否を決めるための確認表です。「向く・向かない」をファイル形式だけで固定せず、実際の抽出結果と検索結果を書き込みます。
| 文書 | まず確認するもの | 問題があったときの対応案 |
|---|---|---|
| スキャンPDF・FAX | 抽出後の氏名、日付、金額と元画像の一致 | OCRの設定や原稿品質を見直し、重要箇所を再照合する |
| テキストPDF・Word | 見出しと本文の対応、ページや出典への参照 | 見出しを補い、元文書へ戻れる情報を残す |
| 表を含む資料 | 行見出し、列見出し、単位、注記が保たれているか | 表の説明を追加するか、表を扱える抽出方法で試す |
| 長い規程・合冊資料 | 質問に必要な箇所が検索結果に含まれるか | 章や意味のまとまりで分割し、同じ質問で比較する |
| 旧版と新版がある資料 | 対象年度、施行日、現行版の判別 | 版の情報と検索対象の条件を定める |
| 顧問先別の資料 | 担当者以外の検索結果に出ないか | 取り込み前に対象範囲とアクセス制御を確認する |
「取り込めたのに答えられない」をどう切り分けるか
元文書で正解箇所を確かめられる質問を用意し、次の順に調べます。
- 読み取りを確認する。 正解に必要な文字・表・注記が、取り込み後の内容に存在するかを見ます。欠けていれば、回答への指示を変える前に抽出方法を直します。
- 検索を確認する。 抽出できているのに検索結果へ出ない場合は、分割位置、検索語、版や権限のフィルターを確認します。候補から外れた理由を追える構成を選んでください。
- 回答を確認する。 必要な箇所を取得できた場合は、回答と引用元が一致するかを見ます。資料に書かれていない結論を足していないかも確認します。
- 回答しない場合を確認する。 正解が資料にない質問と、権限のない資料についての質問を加えます。確認できないことを明示し、閲覧できない内容を出さないかを点検します。
記録は「質問/正解の文書と箇所/抽出結果/検索結果/回答/次に直す箇所」の列で残すと、次の試用でも同じ条件を比較できます。正答率の目標値は業務側で決め、少数の成功例だけで全資料へ広げないようにします。
文書を全部整理してからでなければ始められないか
初回は、入力許可を確認できる一つの業務・文書群に絞る進め方を提案します。最新の所内手順などから対象を選び、抽出と検索の不具合を直してから範囲を広げてください。
過去の原本を上書きして整理する必要はありません。元文書の所在と版を残したうえで、検索に渡す範囲や説明を整えます。運用担当者、更新時の反映手順、検索から外す条件も一緒に決めておきます。
読み取れる文書なら、そのまま入力してよいか
技術的な読み取りの確認とは別に、入力許可を確認してください。顧問先名を削るだけで十分と決めず、案件内容や添付に含まれる情報も点検します。試用には公開資料や検証用データを使い、実データへ広げる前に契約と閲覧権限を確認する方法があります。
入力前の確認にはAI導入のセキュリティチェックリスト、導入範囲の整理には税理士事務所のAI導入ガイドを使ってください。