結論: 公的情報だけを参照するAIは、法令・通達等の確認に使えます。一方、顧客固有の事実や事務所内ルールを必要とする業務では、別のデータ、権限、契約、レビューが必要です。どちらが業務時間の何割を占めるかは自所で測ります。
「公的情報のみ参照」の範囲
国税庁、e-Gov、裁判所、所管官庁等の公開情報を検索対象にするAIやRAGは、出典へ戻りやすくする一つの方法です。ただし、参照先が公的機関だからといって、回答が必ず正しいわけではありません。
確認したい点は次の通りです。
- 対象ページと更新日を特定できるか
- 検索結果が質問に適用される条文・通達・時点か
- 引用とAIの解釈を区別できるか
- 改正前の情報や廃止ページを除外できるか
- 最終判断を有資格者が原文で確認するか
本記事は、公的情報AIを使う士業事務所の数や、ハルシネーション削減率を調査したものではありません。
データ範囲1 — 公的情報
法令、通達、裁判例、会計基準、所管官庁のガイドライン等です。参照時は、発行主体、文書名、URL、日付、適用時期を残します。
公開情報でも、全文転載が許されるとは限りません。利用規約、著作権、API条件、robots等を確認します。
データ範囲2 — 業界資料
業界誌、判例解説、会員向け資料、研修資料等です。公的情報と異なり、契約者・会員だけが使える資料や、二次的な解説が含まれます。
AIへ参照させる前に次を確認します。
- 利用契約がAI処理・複製・検索インデックス化を許すか
- 一次情報と解説を区別できるか
- 著者、版、発行日、更新履歴を保持できるか
- 特定事例の結論を別案件へ無条件に一般化しないか
データ範囲3 — 顧客固有情報
試算表、契約書、議事録、相談履歴、メール、業務フロー等です。利用目的、守秘義務、受任契約、個人情報、第三者提供、AI事業者の契約を確認します。
顧客ごとにデータを分けるだけでは、情報混入を防げる保証はありません。検索インデックス、キャッシュ、ログ、権限継承、外部転記先を含め、顧客Aの情報が顧客Bの処理から取得できないことをテストします。
データ範囲4 — 事務所内ルール
標準業務フロー、レビュー基準、承認経路、様式、内部マニュアル等です。暗黙知をAIへ渡す際は、担当者の経験談をそのまま規則にせず、適用条件、例外、承認者、根拠を記録します。
AIへ参照させる前に、正本と下書き、現行版と旧版を区別します。古いマニュアルが新しい法令や契約より優先されないよう、出典と更新経路を持たせます。
4種類を同じセッションへ入れる前の設計
複数種類のデータを組み合わせると、回答に必要な文脈を増やせます。一方、権限、出典、更新日、顧客分離が複雑になります。「同時に参照すれば品質が大きく上がる」という効果は、本記事では検証していません。
統合する場合は、次を設計します。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 出典 | 回答の各主張から原資料へ戻れるか |
| 優先順位 | 法令、契約、顧客事実、内部ルールが矛盾した場合の扱い |
| 権限 | 利用者が元資料を閲覧できる場合だけAIも取得するか |
| 顧客分離 | 顧客・案件をまたぐ検索を防ぎ、試験できるか |
| 更新 | 改訂・失効・削除が検索結果へ反映されるか |
| ログ | 入力、参照資料、出力、承認、訂正を確認できるか |
| 契約 | AI処理、保存、学習利用、第三者提供が許されるか |
業務時間の割合は作らずに測る
旧稿では、公的情報10〜25%、業界慣行30〜40%、顧客情報30〜50%、内部ルール10〜20%といった比率を記載していましたが、裏付ける調査・検証記録を確認できなかったため撤回しました。
自所で優先順位を決める場合は、一定期間の作業を次のように記録します。
- 参照した情報の種類
- 作業時間とレビュー時間
- 誤り・差し戻し・出典不足
- 自動化できる工程と資格者判断が必要な工程
- データ整備、権限、保守に必要な時間
この実測から、公的情報検索、顧客データ検索、内部ルール整備のどこへ投資するかを決めます。
どう使い分けるか
公的情報AI、汎用AI、顧客データを扱うRAG、外部支援のどれを使うかは、業務と責任範囲で決めます。月額価格、導入難易度、最適な併用形態についても、製品・契約・事務所の条件を確認せず一般化しません。
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本記事はデータ範囲を整理するための設計ガイドです。ShigyoAIが複数事務所で実装・伴走した成果や、特定の相談サービスを示すものではありません。