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2026 / 08 / 07 ベストプラクティス

AIツールのベンダー商談で確認しておきたいこと

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AIツールを業務に組み込む前のベンダー商談で、データ・契約・運用の三つの場面で確認しておきたい項目を、士業の守秘義務とのつながりで整理してご紹介します。

ある士業事務所で、こんなご相談を伺ったことがあります。AIツールの導入を検討する社内会議で、デモは複数社から見せてもらったものの、契約直前になって「結局これで顧問先データを扱って大丈夫なのか」が分からなくなり、稟議が止まってしまった、というお話でした。デモの場では機能の説明が中心になりやすく、データの扱いや契約条項のところまで踏み込んだ質問は、後回しになりがちです。

業務の一部にAIツールを入れる場面では、機能比較表だけでは見えにくい論点がいくつか出てきます。学習に使われるかどうか、保管場所はどこか、障害時の連絡経路がどうなっているか。商談の場で先に確認しておくと、契約後に「聞いていなかった」となる場面を減らしやすくなります。本稿では、データ・契約・運用の三つの場面に分けて、商談で確認しておきたい質問例をご紹介します。

機能比較表では見えにくい場面があります

AIツールのデモは、各社のものを見比べてみると、機能差が横並びに見えてくることが多いようです。一方で、契約後に運用してから問題化しやすいのは、概ね次のような場面です。

  • 入力データが学習に使われるかどうか、保管場所がどこか、保管期間が何日か
  • 委託契約・DPA (= データ処理同意書) の有無、責任範囲、解約時のデータ削除手順
  • 障害時の通知、サポート窓口、退職者アカウントの棚卸、監査ログの取得可否

士業の業務では、顧問先データは守秘義務の対象になります。扱いを誤った場合、事務所の信用問題につながる場面も出てきます。個人情報保護委員会は2023年6月2日付で「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表していて、生成AIサービスへの個人情報入力に関する論点を示しています (個人情報保護委員会)。経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」もVer1.2が公表されていて、AIを利用する側・提供する側の双方の責務に触れています (2026年8月7日確認・総務省)。

商談の場で機能の話だけを聞いて契約に進むと、これらの公式資料に照らしたときに「確認していなかったこと」が残りやすくなります。以下、商談で確認しておきたい質問例を順にご紹介します。

データの扱いについて確認しておきたいこと

入力データはモデルの学習に使われますか

ベンダーによって、回答の精度に差が出やすい質問です。「使いません」と即答できるベンダー、「プランによります」と分けて説明できるベンダー、「確認してご回答します」と一旦持ち帰るベンダー、と幅があります。後者の場合、契約条項を自社で把握していない場面もあるようです。

参考までに、AnthropicのCommercial Terms of Service (2025年6月17日発効版) では “Anthropic may not train models on Customer Content from Services” と記載されていて、入力・出力ともに学習利用しないことが契約条項として書かれています (Anthropic Commercial Terms)。同じような明示性が、検討されているベンダーの規約にもあるかを確認しておくと、後で参照しやすくなります。

データはどこのリージョンで保管されますか

データの物理保管場所は、適用される法域に関わってきます。国内に保管されるのか、米国・EU・その他のリージョンか、選択できるのか固定なのか。士業の業務では、顧問先から「日本国内保管」を要件として提示されるケースもあるため、リージョン選択の可否は早めに確認しておくと、後の説明がしやすくなります。

データの保管期間はどれくらいですか / 削除依頼の手順はどうなっていますか

入力・出力データが何日保管されるか、削除依頼の手順、削除完了の証跡をもらえるか、を確認します。「削除依頼はサポートへメール」だけだと、本当に削除されたかを後から追いにくい場面が出てきます。

暗号化はどうなっていますか (保管時・通信時)

保管時 (at rest) と通信時 (in transit) の双方について、暗号化方式を確認します。「TLSで通信しています」だけでなく、保管時の暗号化、鍵管理 (KMS等) まで聞けると、後で社内に説明しやすくなります。回答が曖昧な場面では、技術的な裏付けの情報が手元にない可能性も出てきます。

第三者監査・認証はどれを保持していますか

SOC 2 Type II、ISO 27001、Pマーク、ISMS等の認証状況を確認します。認証があれば安全が保証される、という関係ではありませんが、第三者の目が入っている事実は、社内で説明する際の判断材料の一つになります。レポートの開示可否 (NDA下での開示等) まで聞いておくと、後の社内検討が進めやすくなる場面もあります。

契約条項について確認しておきたいこと

委託契約 / DPAはありますか

個人情報保護法の整理では、AIベンダーに顧客データを渡す行為が「委託」に該当するかどうかは、ベンダー側のデータの取り扱いに関わってきます。委託契約やDPA (データ処理同意書) の雛形を持っているか、自社の契約フォームに合わせられるか、を確認します。

学習利用しないことは契約書のどこに書かれていますか

入力データが学習に使われない、という回答であっても、それが規約のどの条項に書かれているかを確認しておきます。営業の場での説明だけで契約書に明文化されていない場面では、後で論点になったときに参照先が無くなることがあります。Anthropicのように契約条項として明示されているか、別紙DPAで扱われているか、を一度読み込んでおくと安心です。

解約時のデータ削除手順と完了報告はどうなっていますか

解約後、データは自動で削除されるのか、削除依頼が必要なのか、削除完了の通知が来るのか、バックアップからの削除タイミングはいつなのか。事務所が顧問契約を切り替える場面で、顧問先データの取り扱いを説明する材料として、確認しておくと便利な情報です。

障害・漏洩時の通知義務と通知期限はどう規定されていますか

漏洩が発生した場面で、何時間以内に通知されるか、通知経路はメールかポータルか、再発防止策の報告義務はあるか。個人情報保護法では一定の漏洩について個人情報保護委員会への報告義務があるため、ベンダーからの一次通知が遅れると、事務所側の対応タイミングにも関わってきます。

責任範囲と賠償上限はどうなっていますか

賠償上限が「過去12ヶ月の利用料」程度に設定されている場面が多いようです (Anthropicも同様の規定です)。業界の慣行ではありますが、顧問先データが漏洩した場面の事務所側の損害と必ずしも釣り合うとは限りません。上限を理解した上で、サイバー保険・業務委託契約での補完を別途検討する事務所もあります。

運用の場面で確認しておきたいこと

監査ログは取得・エクスポートできますか

誰が・いつ・どのデータに・どの操作をしたかのログが取れるか、外部のSIEM等にエクスポートできるか。ログが手元に無いと、何かが起きた後の原因確認や、顧問先への説明の材料が揃いにくくなります。

ユーザー追加・削除・権限変更のフローはどうなっていますか

退職された方・委託終了の方のアカウントを即時に無効化できるか、SSO (SAML/OIDC) に対応しているか、ロール設計の柔軟性。SSOに対応していないツールに顧客データを扱わせる場面では、退職時の棚卸が漏れやすくなることがあります。

SLA (稼働率の目安) と障害時の連絡経路はどうなっていますか

稼働率の目標値、ダウンタイム時のステータスページ、緊急時の電話・チャット窓口の有無。「ベストエフォート」とだけ書かれている場面では、業務が止まった場合のリスクを事務所側で受け止める前提になります。

サポート対応時間と日本語対応の可否はどうなっていますか

サポート窓口の対応時間 (24/7か営業時間内か)、日本語サポートの有無、エスカレーション経路。海外のSaaSで「メールで48時間以内に返信」という条件だと、士業の繁忙期 (決算・確定申告期) には対応が間に合わない場面も出てきます。

既存業務システムとの連携実績はありますか

freee・マネーフォワード・kintone等との連携の有無、認証方式 (OAuth等)、連携時のデータフロー図の提供可否。連携を組む段階で改めてセキュリティ面の論点が出てくるため、連携の実績があるベンダーのほうが、運用のノウハウが蓄積されている傾向があります。

回答の受け止め方

質問への回答が集まった後、いくつかの軸で読み返すと、社内での合意が取りやすくなります。

  • 営業の方が即答できる項目は、社内で整理されている目安になります
  • 規約・DPA雛形・SOC 2レポート等を書面で出せるかどうか、を確認します
  • 「リージョンは東京」「保管期間は30日」「通知は72時間以内」のように、数字で答えられるかどうかを見ます
  • 「現状は未対応です」と認められるベンダーのほうが、後で論点が見えやすくなる場面もあります

すべての項目に満点で答えられるベンダーは、現実にはあまり多くないようです。自社で受け入れにくい項目はどれか、受け入れる場合に運用でカバーできる項目はどれか、を商談直後に社内で並べて見ておくと、判断がしやすくなります。

守秘義務との関係で押さえたい場面

確認項目のうち、士業の守秘義務との関係で押さえておきたい場面を並べておきます。

  • 学習利用についての規約の記載 (= 規約のどこに書かれているかまで追っておくと安心です)
  • データのリージョンと保管期間 (= 顧問先への説明資料の前提になります)
  • 暗号化と監査ログ (= 何かが起きた後の確認と顧問先説明の材料になります)
  • 委託契約 / DPA (= 個人情報保護法の整理を契約で扱う形になります)
  • 漏洩通知の期限 (= 事務所側の対応タイミングに関わってきます)

個人情報保護委員会の2023年6月2日付注意喚起では、生成AIサービスへの個人情報入力に関して、本人の同意・利用目的・第三者提供等の論点が示されています。経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」(Ver1.2) も、利用する側と提供する側の双方の責務に触れていて、ベンダー選定の場面で前提として押さえておくと、商談での確認がしやすくなります。

商談の場に持っていきたい確認項目

データ

  • 入力データはモデルの学習に使われますか
  • データはどこのリージョンで保管されますか
  • データの保管期間はどれくらいですか / 削除依頼の手順はどうなっていますか
  • 暗号化はどうなっていますか (保管時・通信時)
  • 第三者監査・認証はどれを保持していますか

契約

  • 委託契約 / DPAはありますか
  • 学習利用しないことは契約書のどこに書かれていますか
  • 解約時のデータ削除手順と完了報告はどうなっていますか
  • 障害・漏洩時の通知義務と通知期限はどう規定されていますか
  • 責任範囲と賠償上限はどうなっていますか

運用

  • 監査ログは取得・エクスポートできますか
  • ユーザー追加・削除・権限変更のフローはどうなっていますか
  • SLAと障害時の連絡経路はどうなっていますか
  • サポート対応時間と日本語対応の可否はどうなっていますか
  • 既存業務システムとの連携実績はありますか

確認項目のうち、複数の項目で「即答できない」「書面が出ない」「数字が出ない」場面が重なるベンダーは、契約後の運用で事務所側の手間が増えやすい傾向があるようです。

商談後に手元に残しておきたいこと

AIツールの選定の場面では、機能比較表で決まりきらない論点があります。データの扱い、契約条項、運用体制、という三つの場面で、ベンダーが具体的に答えられるかどうかが、契約後の運用負荷に関わってきます。

商談の場では確認項目を手元に置きながら、回答を書面で集めて、解釈は専門家のレビューを経る、という流れを取っている事務所もあります。デモの印象だけで意思決定を急ぐよりも、書面と数字で答えられるかどうかを基準に置いておくと、結果として社内の合意が早く取れる場面もあります。

参考

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士業AI

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