補助金申請書をAIで下書きするなら、対象とする公募回と、申請者の事実・計画の根拠を先に固定します。AIへの依頼は、その資料にある内容の整理から始め、売上見込みや実施体制を勝手に補わせないようにします。
この記事は、行政書士などが担当する申請支援業務の中で使う作業手順の提案です。特定の補助金への適用可否や、採択の見込みを判定するものではありません。
公募要領はどの版を使う?
制度名だけでなく、枠・公募回・資料の版を記録します。例えば、小規模事業者持続化補助金の公式サイトでは、公募回ごとの案内と旧版の公募要領を分けて掲載しています。商工会地区と商工会議所地区でも窓口が分かれています。商工会地区の公式案内、商工会議所地区の公式案内
着手時には、次の欄を埋めてからAIへ資料を渡します。申請支援を行う資格・契約上の範囲と、実際の提出者も別途確認しておきます。
| 確認欄 | 記録する内容 |
|---|---|
| 対象 | 制度名、枠、公募回、申請先 |
| 公募資料 | 公募要領・手引き・FAQの版、取得日、公式URL |
| 申請方法 | 使用する様式やシステム、申請者側で行う操作 |
| 期限 | 申請締切と、別途必要な書類の発行依頼などの期限 |
| 変更点 | 旧版からの変更と、作成中の原稿への影響 |
古い申請書の様式番号をそのまま使わず、対象回の案内からたどります。期限の記載が見つからない場合も、過去回の日付から推測して予定表を埋めないようにします。
事業計画の文章は何を根拠に作る?
ヒアリングで聞いた内容を、確認済みの実績、今後の計画、追加で確認する事項に分けます。次の表は、その整理に使う項目案です。
| 申請書に書く内容 | 参照する材料 | 原稿での扱い |
|---|---|---|
| 既存事業の実績 | 帳簿・実績資料・確認済みの聞き取り | 対象期間と資料の所在を添える |
| 取り組む内容 | 申請者が決めた目的・方法・実施体制 | 誰が何を行う計画かを明記する |
| 市場・顧客の根拠 | 出所と時点を確認した統計・調査・受注資料 | 資料が示す範囲を超えて断定しない |
| 経費 | 見積書と支出計画 | 金額・単位・税区分を原資料と照合する |
| 売上などの見通し | 単価・数量・時期など、申請者が置いた前提 | 実績と予測を分け、算定方法を残す |
| 加点等の条件 | 対象回の要件と申請者の裏付け資料 | 適合を確認してから記載する |
「申請者らしさを出す」という理由で、実績や顧客の声を追加しないことが大切です。材料がない項目は、追加ヒアリングの質問に戻します。
AIにはどのように下書きを依頼する?
入力を許可した資料だけを対象に、次のように依頼します。
対象回の公募資料と、申請者が確認した事実・計画の表を使って下書きを作ってください。各段落に根拠となる資料の箇所を対応付けてください。資料にない実績・数値・受注見込み・実施体制は補わず、確認事項として分けてください。実績と計画を区別し、要件を満たすと判断できない項目は質問に戻してください。
原稿と一緒に、根拠一覧と質問一覧を受け取ります。公募資料の文章を申請者の実績であるかのように書き換えていないか、裏付けのない市場規模や採択見込みを追加していないかを確認します。
数値計画はどう点検する?
金額や数量は原資料と照合し、合計や比率は計算式でも確かめます。AIが示した合計を、そのまま別の表へ転記して確認済みにしないようにします。
特に、売上計画なら単価と数量、経費計画なら見積の内訳と支出時期を対応付けます。実績、申請者の予測、制度上の条件を同じ欄に混ぜず、前提が変わった際にどの数値を見直すか分かるようにします。
機密保護のために識別名を置き換えることと、事業上の数値を変えることも区別します。実際の値を入力できない環境では、原資料は所内に保持し、文章構成の検討までに用途を限定してください。仮の金額を含む試作を、そのまま提出用の数値計画へ昇格させない運用にします。
提出前と提出後は何を残す?
提出前には、本文と添付資料、入力画面の内容を照合します。採用した原稿の版、確認者、申請者の確認内容を記録し、提出するファイルがその版と一致するか確かめます。
提出後は、受付状況、補正依頼、追加資料、次の対応者を追えるようにします。小規模事業者持続化補助金の公式サイトも、採択後の手続きと事業実施後の実績報告・請求を分けて案内しています。申請原稿ができた段階で、後続の手続きを完了扱いにしないようにします。公式サイトの手続き案内
入力情報の扱いについては、個人情報を生成AIへ渡す際に利用目的の達成に必要な範囲内かを確認するよう、個人情報保護委員会が注意喚起しています。決算資料や事業戦略についても、申請者との契約と利用するサービスの条件を確認して、入力範囲を決めてください。個人情報保護委員会の注意喚起
まず一件分の原稿で、各段落の根拠、数値の計算元、残る質問をたどれるか確認します。AI導入の効果は、下書き時間と確認・修正時間、不足資料や根拠のない記載を分けて記録すると、どの工程を改善すべきか判断できます。