ChatGPTは利用する製品、RAGは検索した情報を生成AIの回答に使う構成です。 ChatGPTにもファイルの読み取りや接続先の情報を参照する機能があるため、「所内資料を使うなら必ず別のRAGを構築する」とは判断しないでください。
税理士事務所で検討するなら、まず対象業務と資料を決め、既存機能で権限・更新・根拠確認の条件を満たせるかを試す方法を提案します。その結果、足りない条件が具体的になった段階で、別製品や追加構築を比較します。
RAGとChatGPTを、どの単位で比較すればよい?
RAGは「Retrieval-Augmented Generation」の略で、検索拡張生成と呼ばれます。Microsoftの解説では、独自の情報を回答の根拠に使う構成として紹介され、検索対象や文書の分割、アクセス制御などが設計上の論点になっています。MicrosoftのRAG解説
一方、ChatGPTでは、会話にアップロードした文書の要約・比較・情報抽出などができます。使える範囲や上限はプランや設定によります。「学習済みのモデルだけ」を想定した比較を、ファイルや外部サービスを利用できるChatGPT全体の説明に置き換えないようにします。OpenAIのファイルアップロードFAQ
比較する際は、「どの画面を使うか」「資料をどこから取得するか」「誰が設定と運用を持つか」を別々に書き出してください。ChatGPTを使うことと、外部情報を検索して回答に使うことは、両立する選択肢です。
所内資料を使うには、どんな方法がある?
まず、資料を使いたい場面を次の表に当てはめます。採用を決める表ではなく、候補ごとに確かめる条件を整理するための表です。
| 検討する方法 | 試したい業務の例 | 確かめる条件 |
|---|---|---|
| 会話へファイルを添付する | 指定した手順書の要約、選んだ資料同士の比較 | 入力許可、読み取り範囲、ファイルの版、共有先 |
| 既存サービスに接続する | 保存先を指定して所内資料を探す | 対応する接続先、検索範囲、利用者の権限、更新の反映 |
| 別の検索製品を利用する | 所内検索を共通の入口から使う | 接続できる資料、引用表示、管理機能、運用担当 |
| 検索と回答の仕組みを追加構築する | 既存機能では満たせない検索条件や業務連携を設ける | 不足する要件、実装範囲、検証方法、保守と引継ぎ |
OpenAIは、ChatGPTのアプリが接続先サービスの情報を検索・参照できると説明しています。利用可否は、アプリ、プラン、地域、ワークスペース、利用者の役割などに依存します。名称だけで利用可能と判断せず、契約中の環境で対象機能を確認してください。OpenAIの接続アプリの説明
資料を渡す方式を選ぶ前に、顧問先情報の入力可否を確認します。名前を消すことや法人契約だけを判断条件にせず、情報・利用目的・契約・設定を合わせて点検してください。士業事務所の情報管理ガイド
どの条件が足りなければ、追加構築を検討する?
「文書が多い」「AIが間違えた」だけで構築の要否を決めず、満たせなかった条件を記録してください。以下は、所内検索の試用結果を比較するための確認表です。
| 判断する条件 | 既存機能で確認すること | 満たせない場合に調べること |
|---|---|---|
| 資料の範囲 | 必要な保管先とファイルを参照できるか | 対応形式、接続方法、取り込みの失敗 |
| 顧問先・年度・版 | 質問に合う資料を取得できるか | 文書の属性と、検索条件への対応 |
| 閲覧権限 | 権限のない人に内容や抜粋が返らないか | 接続元の権限と検索時の制御 |
| 根拠の確認 | 引用箇所を開いて回答と照合できるか | 文書識別子、ページ・見出し、引用表示 |
| 更新と除外 | 変更後の内容や権限が検索に反映されるか | 同期・索引・キャッシュの更新方法 |
| 業務への接続 | 回答を確認した後の作業まで扱えるか | 手作業でよい範囲、既存連携、追加実装 |
不足の原因が文書側にあるか、取り込み・検索・回答側にあるかを分けます。例えば、対象年度が文書にも一覧にも書かれていなければ、その情報を誰が補うかを先に決めてください。文書の整理項目はRAG導入前の文書確認で扱っています。
追加構築を見積もる場合は、初期開発に加えて、接続先の変更、文書の更新、権限の変更、品質の再確認を誰が担当するかまで比較します。本稿では、資料数や不具合の件数だけで独自構築へ進む基準は設けません。
RAGなら更新した資料がすぐ反映される?
元の資料を更新したことと、検索で新しい内容を取得できることは分けて確認してください。 OpenAIの管理者向け同期説明でも、初期索引の作成や、その後の内容・権限変更の反映に時間がかかる場合が示されています。接続方法ごとの反映条件を確かめます。OpenAIの同期と更新の説明
以下は架空の試験例です。所内手順の「受付後に担当者へ通知する」を変更した場合、元ファイルだけでなく、変更箇所を検索した結果と、その内容を使った回答を確認します。前の内容が返るときは、取得した資料の版や取り込み状態を調べてください。
資料を検索対象から外す場合や、利用者の閲覧権限を変更する場合も同様に、変更後の利用者で結果を確認します。既存製品にも追加構築にも、この照合を行う担当者を決めてください。
最初の試用では、何を比較して判断する?
対象を一つの業務に絞り、同じ質問と資料で候補を比べます。次の順で記録を残す進め方を提案します。
- 対象を決める。 誰のどの作業を補助するか、入力してよい資料は何かを書く。
- 正解と根拠を用意する。 業務担当者が、参照すべき資料と箇所、回答に必要な条件を書く。
- 既存機能で試す。 資料の版と利用者の権限をそろえ、取得した根拠と回答を記録する。
- 不足を切り分ける。 文書の不足、取り込みの失敗、検索条件、回答の誤りを分ける。
- 次の手段を選ぶ。 設定・文書整理で対応するか、別製品や追加構築を比較するかを決める。
資料に答えがない質問も含め、根拠がないまま結論を作っていないかを確認してください。回答に引用があっても、その箇所が結論を支えるかを人が照合します。
試用後は「既存機能で満たせた条件」「足りなかった条件」「改善を担当する人」を残してください。業務選定・費用・外注の判断は、税理士事務所のAI導入ガイドにつなげて検討できます。