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2026 / 07 / 20 事例

会計の自動仕訳を業務の流れに置くときに、決めておきたいこと

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業務の一部にAI自動仕訳を入れている事務所で見えてくる、誤分類の蓄積・税務調査での説明・属人化の場面を、自動化レベルと監査ログの運用例として整理してご紹介します。

ある会計事務所の方から、こんな話を伺ったことがあります。「freeeのAIが銀行口座とクレジットカードの明細を読み込んで、勘定科目まで振り分けてくれるので、最近は手仕訳をほとんどしていない」というお話でした。担当の方の手は確かに空くようになったそうです。

これは仮想ケースですが、特定の事務所の実話ではなく、守秘の観点も踏まえて再構成した典型的な状況です。

一方、税務調査の場面で別の風景になることもあるそうです。調査官の方から「この交際費の按分の根拠は」「この消耗品費は、なぜ仕入ではなく経費に入れたのか」と問われたとき、「AIが自動で分類した取引です」とだけお答えするのは難しい場面です。確認しようとしても、誰がいつ、どのような根拠で承認したかが追えないことがあります。

業務の一部にAI自動仕訳を入れている事務所では、業種や規模を問わず、似た場面に行き当たりやすいようです。本稿は、会計の自動化を業務の流れに置くときに、決めておきたい運用の話をお伝えします。

自動仕訳の現場でよく見る三つの場面

会計事務所の方々から伺うお話を並べていくと、自動仕訳の現場で見えてくる場面が大きく3つあります。

一つ目は、誤分類が気づかれにくい形で蓄積していく場面です。AIによる自動仕訳は、過去の仕訳パターンや明細の文字列から、勘定科目を推測します。便利な仕組みですが、似て非なる科目 (「会議費」 と 「交際費」、「消耗品費」 と 「工具器具備品」、「外注費」 と 「給与」) の判別は、契約書・実態・継続性を総合的に見たうえで判断するものです。AIが一度誤った分類を 「正解」 として学習すると、以降の取引でも同じ誤りが繰り返されることがあり、月次決算では気づきにくいまま年度末を迎えるケースもあります。

二つ目は、税務調査で処理の根拠を説明する場面です。担当者の方が判断していれば 「請求書の備考欄と、先方との打ち合わせメモから判断しました」 とお答えしやすいのですが、AIが自動で処理した取引については、判断の経路が後追いしにくいことがあります。最終的な責任は事務所と関与先にあり、ベンダーの方が代わりに説明するわけではないので、根拠の記録が手元にあるかどうかで、当日の対応のしやすさが変わってきます。

三つ目は、自動化が進むほど属人化が深まる場面です。「この仕訳ルール、誰が設定したのでしたか」 「学習データを変えると、過去にさかのぼって影響が出ることもあるそうです」 という話が、特定のスタッフの方に集中することがあります。自動化は本来、業務を平準化する仕組みですが、設定・例外処理・モデル更新の判断が一人に寄ると、依存度が上がる方向に動くことがあります。

電子帳簿保存法の要件と、自動仕訳の運用を整合させる

電子帳簿保存法では、訂正・削除の履歴を残すこと、検索機能を備えることなどが、優良な電子帳簿の要件として位置づけられています (詳細は国税庁の特設サイトをご確認ください)。

AIによる自動仕訳の運用と並べて見ておきたい論点を、いくつかご紹介します。

訂正・削除履歴の論点があります。AIが提案した仕訳を後から修正したとき、その履歴が残る形になっているかという観点です。担当者の方の手で 「上書き」 する流れにしてしまうと、いつ・どなたが・なぜ修正したかが追いにくくなります。

承認フローの論点もあります。自動仕訳された取引が、どなたの承認を経て確定したかという経路です。承認者の方が明示されない流れになっていると、結果として事務所側の責任で確定したという整理になりやすいので、承認の足跡をどこに残すかを決めておく事務所もあります。

データ保存の論点もあります。AIの学習元になっている取引データ・元帳・証憑の保存期間と保存形式が、電帳法の要件と整合しているかという観点です。

これらは事務所ごとに状況が異なるので、所属会・顧問の社労士の方・関与先の状況に応じて整える形が多いようです。

税務調査で問われやすい、判断が分かれる取引

税務調査の場面で論点になりやすいのは、判断が分かれる取引です。次のような項目は、AIの自動分類だけでは説明が難しい場面が出てきます。

  • 役員と従業員が混在する飲食代の按分 (交際費 / 会議費 / 福利厚生費)
  • 自宅兼事務所の家事按分 (地代家賃 / 水道光熱費)
  • 中古資産の取得 (消耗品費 / 工具器具備品 / 資本的支出)
  • 業務委託費の実態 (外注費 / 給与)
  • 海外取引の消費税区分 (課税 / 免税 / 不課税)

AIが過去の傾向から分類すること自体は可能ですが、根拠を聞かれたときには、請求書の備考欄・先方との打ち合わせ記録・契約書の条項などを、人間の手で紐付けて記録しておかないと、後から再構成するのは難しい場面です。「AIに任せているので、根拠はAIに確認してください」 という流れは、税務調査の場面では取りにくいというのが、現場でよく伺うお話です。

自動化のレベルを使い分けている事務所の例

自動仕訳を 「全部AIに任せる」 か 「全部手仕訳」 かの二択にすると、運用が動きにくくなる場面が出てきます。取引の性質に応じて自動化のレベルを使い分けている事務所もあり、例として3つの段階を組み合わせる形をご紹介します。

レベル内容向いている取引の例
参考表示AIが候補を表示し、担当者の方が必ず選ぶ判断が分かれる科目・高額取引・新規取引先
提案AIが事前に分類し、担当者の方がレビューして承認定型化されているが金額が中程度の取引
自動承認AIが分類し、例外検知に引っかかったものだけレビュー同一取引先・同一金額帯・低リスクの繰り返し取引

すべての取引を自動承認に寄せると、誤分類が蓄積する経路が広がります。逆にすべてを参考表示に倒すと、自動化のメリットを取りにくくなります。事務所の規模・関与先の業種・取引量に応じて、3つを組み合わせている事務所が多いようです。

監査ログと例外処理を業務の流れに置く

自動仕訳を運用するうえで、最低限置いておきたい監査・例外処理の項目をご紹介します。

承認のログを残す工夫があります。自動承認であっても 「自動承認ルールID」 と 「適用日時」 を残しておくと、後から経緯を振り返りやすくなります。

例外検知ルールを置く工夫もあります。金額のしきい値・初回の取引先・科目の変更といったトリガーを設定し、引っかかった取引は人間レビューに回す流れです。

月次レビューを挟む工夫もあります。自動承認された取引のうち、ランダムサンプリングで担当者の方が抜き打ちチェックする運用です。

モデル更新の記録を残す工夫もあります。AI仕訳のルールを更新した日時・更新者・変更内容を残しておくと、後から差分を追いやすくなります。

これらは会計SaaSが標準機能として提供しているものもあれば、別途運用ルールとして補う場面もあります。導入時に 「どのログが何年残るか」 をベンダーの方に確認しておく事務所もあります。

個人情報・守秘義務との重なり

会計の自動化では、税務だけでなく、個人情報・守秘義務の論点も同じ場面でつながります。個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しており、プロンプト入力時・出力確認時のいずれにおいても、個人情報の取扱いに配慮することを示しています。

会計データには、取引先名・従業員氏名・口座番号・給与額・取引金額など、機微な情報が大量に含まれます。AI仕訳の機能を提供しているSaaSが、これらのデータを学習に使うかどうか、データの保管場所はどこか、退会後にデータがどう扱われるかについて、契約書・利用規約・プライバシーポリシーで確認しておく事務所もあります。

関与先からお預かりしたデータを、別のサービス (汎用LLM等) に流し込んで仕訳の分類を依頼する経路は、守秘義務・個人情報保護の観点で慎重に扱う場面になります。

設計の手順を一度通しておく

会計の自動化を 「使うか・使わないか」 ではなく、「どこまでを自動化し、どこを担当者の方が判断するか」 を決めておくと、運用がぶれにくくなります。手順を一通り並べてみます。

最初に、関与先ごとの取引帯を3つのレベルに割り付けます。同一取引先・同一金額帯の繰り返し取引は自動承認に寄せ、判断が分かれる科目や高額取引は参考表示に置き、その間は提案レベルに置く形です。割付表を事務所として1枚持っておくと、運用が揃いやすくなります。

次に、自動承認ルールごとに 「ルールID・適用日時・更新履歴」 を残す流れに揃えます。電帳法の訂正・削除履歴と整合する形にしておくと、税務調査の場面で照会にお応えしやすくなります。

例外検知の閾値を、運用しながら更新する流れも置いておきます。金額のしきい値・初回取引先・科目変更のトリガーは、関与先の事業フェーズで動かす必要があります。月次レビューでサンプリングし、外れた取引のパターンをルール側に戻すサイクルを回す事務所もあります。

関与先のデータを汎用LLMに直接投入する経路を残さない、という選択もよく取られます。会計SaaSの標準機能の範囲で動かすか、匿名化したサンプルで検証する経路に倒す形です。

会計の自動化は、定型業務を平準化し、関与先への提供価値を高める道具になり得ます。自動化のレベル設計・監査ログ・例外処理・守秘義務の運用を業務の流れに置いておくと、税務調査の場面や属人化の場面で、後から困りにくくなります。設計の手順を一度通しておく、という運用は、会計の自動化を業務の中に入れる場面で取られやすい流れの一つです。

参考

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