相続相談メモをAIで要約するなら、入力する情報の取扱いを確認したうえで、相談者の発言・資料で確認できた内容・確認待ちの事項を分ける手順を用意してください。読みやすく整った文章だけでは、元の記録を正しく引き継げたかを判断できません。
この記事では、税理士・弁護士などの事務所が、相談記録の整理をAIに補助させるための確認方法を提案します。相続人、財産、判断能力、税務上の扱いなどの結論は、要約から自動的に確定させず、担当する専門家が原資料と個別の事情を確認します。
相続相談メモを、そのままAIへ入力してよいか
最初に、要約で何を整理したいかを決め、必要な情報だけを選びます。入力に進む前に、次の表を案件の確認に使ってください。
| 確認すること | 記録する内容 |
|---|---|
| 作業の目的 | 発言の整理、時系列の整理、追加確認事項の抽出など |
| 含まれる情報 | 相談者・親族の情報、健康情報、財産、連絡先等の有無 |
| 入力の根拠 | 事務所の入力許可、契約上の取扱い、利用するAIの条件 |
| 不要な情報 | 要約の目的には必要がなく、入力対象から外す項目 |
| 利用する環境 | アカウント、プラン、設定、外部接続先 |
| 確認と保存 | 要約を点検する人、原本・要約の保存場所、閲覧できる人 |
個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトの入力が、特定した利用目的の達成に必要な範囲かを確認するよう注意喚起しています。具体的な入力可否は、含まれる情報と利用方法に即して確認してください。生成AIサービスの利用に関する注意喚起等
AI側の条件は、AI導入のセキュリティチェックリストにある学習利用・保存・閲覧・削除の項目を使って確認できます。
故人の情報と遺族の情報はどう区別するか
個人情報保護法上の「個人情報」は生存する個人に関する情報で、故人の情報自体は同法の保護対象ではありません。ただし、故人の家族関係などが同時に生存する遺族の情報でもある場合は、その遺族の個人情報となります。個人情報保護委員会のFAQは、この区別を示しています。FAQ Q1-21
「相続の資料だから全部が故人の情報」「故人の情報だからそのまま入力できる」と決めず、誰に関する情報かを確認してください。案件記録としての守秘や契約上の取扱いも、別に点検します。
生存する個人の病歴などを含む場合は、要配慮個人情報に関する確認も必要です。通則編は病歴等を要配慮個人情報として示し、その取得・第三者提供には原則として本人の同意が必要としています。例外や委託等の扱いを含む個別の適用は、具体的な取扱いに即して確認してください。通則編・要配慮個人情報
名前を伏せれば、相続メモを入力してよいか
氏名の置換だけで判断せず、住所、物件、家族関係、出来事などの組合せも点検してください。対応表を作る場合は、その保存先と閲覧者を決め、必要のない識別情報をAIへ送らないようにします。
ただし、氏名をA・Bに置換したことだけで、法令上の「匿名加工情報」「仮名加工情報」の要件を満たすと判断しないでください。自所で行った処理と、確認できた入力範囲を具体的に記録することを提案します。
元の情報を変えてしまわないことも必要です。たとえば要約に使わない金額を入力対象から外す場合は、別の金額に置き換えず、「入力対象から除外した」として扱います。原本は所内の定めた場所に残し、要約から原資料へ戻れるようにします。
AIの要約で事実を変えないためには、何を照合するか
出力を一つの文章にまとめる前に、次の列に分けて点検する方法があります。
| 記録欄 | 入れる内容 | 点検すること |
|---|---|---|
| 発言 | 誰が何を述べたか | 伝聞と本人の発言が入れ替わっていないか |
| 根拠資料 | 資料名と確認した箇所 | 存在しない書類や記述が補われていないか |
| 確認できた事実 | 原資料で裏付けた内容 | 日付、金額、名義、関係者が一致するか |
| 確認待ち | 不足資料や食い違い | 不明な内容が断定に変わっていないか |
| 専門家の判断 | 担当者が確認した評価・結論 | AIの推測が判断済みとして混ざっていないか |
家族関係図や時系列表を作らせる場合も、人物同士の関係と日付を一つずつ原資料へ戻って照合します。元のメモに書かれていない続柄や法的評価を、AIに埋めさせないようにしてください。
要約の指示には何を書けばよいか
入力許可を確認した記録について、次の指示案を使えます。
入力された記録の範囲で、「発言」「根拠資料」「確認待ち」を分けて整理してください。発言者が分からないものはその旨を示してください。日付、金額、名義、続柄を推測で補わず、記録同士が食い違う場合は両方と出典箇所を残してください。法的な評価や結論は追加しないでください。
この指示を入れたことだけで点検を終えず、担当者が出力を原資料と照合します。特に、省略された条件、否定表現、伝聞、日付や金額の変更を確認してください。
どの順序なら所内で試しやすいか
まず実在の相談者を含まない検証用の記録で、上の表に分けた要約を試します。意図的に日付不明、資料未入手、発言の食い違いを含め、それらが勝手に確定されないかを確認する方法です。
次に、入力を認める範囲と環境を決めたうえで、対象を絞って原資料との照合を続けます。最終的な案件記録に採用した内容と、その確認者を残してください。入力の許可と、要約を案件記録へ採用する判断をそれぞれ行う運用にします。